民法改正に伴う労働、社会保険への影響

平成29年6月2日公布、平成32年4月施行の債権分野に関する民法の改正があります。この改正が施行されると、労働、社会保険に何か影響が及ぶのでしょうか。

 

民法改正

今回の債権分野に関する民法の改正では、「消滅時効」が大きく変わります。

改正民法166条1項

債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使できることを知った時から5年行使しないとき
二 権利を行使できる時から10年間行使しないとき

 

改正前の消滅時効の成立条件は、「10年間行使しないときは、消滅する」だったのが、改正後は、「権利を行使できることを知ったときから5年」が追加されました。消滅時効期間が10年から5年になると考えてよいでしょう。

 

労働基準法への影響

現行労働基準法115条では、休業手当、残業代、有給休暇等の消滅時効は2年、退職金に関する消滅時効は5年と規定されています。つまり、残業代の不払請求は、2年以内、退職金の請求は5年以内に行わなければ権利が消滅します。そして、労働基準法は、民法(一般法)に対して特別法の位置づけにあるので、労働基準法の規定が民法の規定に優先するために、改正民法で消滅時効が5年に変更されても、例えば残業代の不払請求はこれまで通り2年以内にしなければなりません。この点において改正民法の影響はありません。

 

労務管理上注意すべき点

しかし、改正民法では、消滅時効5年が成立するのは、「債権者が権利を行使できることを知った時から」です。そしてこの場合の債権者とは、労働者のことです。一般に、労働契約から生じた残業代や有給休暇等で、主たる給付に関するものは、「労働者が権利を行使できることを知った時」(主観的)と「権利を行使できる時」(客観的)の起算点は、通常一致すると考えられますが、労務管理上、労働者に残業代発生の起算点(何月分の給与)や有給休暇の起算点(有給休暇付与日)を明確に伝えておき、それらが主観的事項であることを知らしめる必要があります。

起算点を明確に伝えるべき理由

労働基準法115条では、賃金や災害補償等の請求権は2年間、退職金は5年間と規定してあるだけで起算点については触れていないことを前提に以下の理由が考えられます。

1.起算点を明確にすれば、2年または5年以上遡っての請求ができなくなるため
2.以下の理由によるため
起算点を明確にしなかった場合を考えてみましょう。この場合、民法上の消滅時効は「権利を行使できる時」から10年になるので、特別法としての労働基準法の適用をするとしても、例えばある労働者が、消化しなかった有給休暇があったことを10年以内に知ったらその時から2年以内であれば、過去10年以内の有給休暇の行使を請求できることになりかねかせん。

 

改正民法の年金法への影響

国民年金法102条、厚生年金保険法92条で、消滅時効は、「支給すべき事由が生じた日から5年」と規定しています。したがって、このこと自体は改正民法で「権利を行使できることを知った日から5年」に変わったところで影響はありません。

 

次回のコラムでは、会計法と年金法における時効の援用の違いについて触れてみたいと思います。

 

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