既存助成金が「生産性向上」で増額される しかし・・・

キャリアアップ助成金や人材開発助成金のような「人気」のある助成金に「生産性の向上」を実現させた場合、助成金が増額される仕組みが追加されています。

キャリアアップ助成金の変更点

1.コースの細分化

従来の3コース(正社員化コース、人材育成コース、処遇改善コース)が、新規コースも含めて8コース(正社員化コース、人材育成コース、賃金規程等改定コース、健康診断制度コース、賃金規程等共通化コース、諸手当制度共通化コース、選択的適用拡大導入時処遇改善コース、短時間労働者労働時間延長コース)に細分化されました。

2.助成金上限額の変更

主な新コースで見てみると、昨年までの助成金額が、以下のように変更されています(3コースのみ抜粋)。

正社員化コース:1人あたり60万円 → 57万円

人材育成コース:1時間あたりの賃金助成金800円 → 760円

健康診断コース:有期契約労働者4人以上の健康診断を実施すると1事業所あたり40万円 → 38万円

3.生産性を向上させると上限が増額

2の上限額に増額され、以下のようになります(3コースのみ抜粋)

正社員化コース:57万円 + 15万円 = 72万円

人材育成コース:760円 + 200円 = 960円

健康診断コース:38万円 + 10万円 = 48万円

生産性の定義

厚生労働省が、助成金の増額対象とする「生産性」を求める式を公表しています。

 

 生産性 = (営業利益 + 人件費 + 原価償却費 + 動産・不動産賃借料 + 租税公課) / 雇用保険被保険者数

 

一方、経営者や、人事部門が気にする「労働生産性」を求める式は、

労働生産性 = 付加価値 / 社員の平均人数

ここで、付加価値 ≒ 限界利益(つまり、粗利益)と考えます。

 

生産性向上の定義

生産性労働生産性も分母は、要するに社員数なので、式の分子をどうとらえるかという、いわば生産性向上の定義が違います。
典型的な要素は、人件費です。労働生産性では、社員の人数を減らせば、分母が小さくなると同時に、人件費分の粗利益が増えるので、労働生産性が向上します。しかし、生産性では、その人件費が分子にあるので、社員の数を減らしても分母、分子ともに小さくなり、生産性の向上にはつながりません

生産性においては、給与を上げ(人件費増)、設備投資を増やす(減価償却費増)等の施策が重要になります。

生産性向上の基準

助成金が増額されるための生産性向上の基準は、支給申請時の直近の会計年度の生産性と3年前の生産性とを比較して、「6%以上」向上していなければなりません。

生産性の課題

生産性も労働生産性も式の分子に利益があります。利益を増大させることで生産性や労働生産性が大きくなることは、当然のことですが、これまでとりわけ日本の市場で声高に言われてきた「顧客満足度(CS)」についてどう考えればよいのでしょうか。一人の顧客にアフターサービスも含めてきめ細かく対応することで顧客満足度を高めてきた手法は、利益を薄くすること=生産性(労働生産性)を下げることになってしまいます。先進国の中では、日本の労働生産性の低さがたびたび指摘されていることから労働生産性の向上が、国の重点項目にもなっている昨今ですが、一方で、評価されている顧客満足度を落とさないよう俯瞰してゆかなければならないと思います。

   

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固定残業代の根拠の明確化

固定残業代と称し、あらかじめ時間外の労働を想定して、固定した割増賃金を支払う制度について、厚生労働省は、その内容、算定方法などを明確化する方針です。対象と目的は、職業紹介事業者や求人をする企業で、適正に労働条件を明示することですが、その内容は、社員の毎月の給与の算定に係ることですので注目に値します。

制度の明示

まず、求人について見ると、企業が求人をする際の労働条件として、固定残業代制度みなし労働時間制度を採用していることを明示しなければなりません。明示すべき内容としては、固定残業代の算定方法、固定残業代以外の基本給の額、想定した残業時間を超えた場合の割増賃金が検討されています。

給与の算定

固定残業代を採用している企業にとっては、毎月の給与計算で固定残業に係る算定が常にあるわけですが、果たしてどこまで適正に算定が行われているでしょうか。今回の厚労省の明確化指針に関する検討を待つまでもなく、固定残業代制度の意味は明確です。すなわち、1ヶ月の給与算定において、固定残業第を算出する根拠として、何時間の残業を想定しているかです。その想定時間内(残業0時間を含む)であれば、あらかじめ決めておく固定残業代を基本給に加算します。

あいまいな固定残業時間超のあつかい

ここまでは、固定残業代を採用している企業にはよく知られていることですが、では、会社は固定残業時間として想定した時間を社員に広く知らしめているでしょうか。或いは社員が固定的に支払われる残業代の残業時間に、上限があることを意識しているでしょうか。社員の多くはなんとなく、「固定残業代とは、残業をしなくても支払われる代わりに、どんなに長時間残業をしても『固定』で残業代は決まっている」と思っていないでしょうか。

あいまいさを排除した厚労省指針

このあいまいさを排除するため、今回の厚労省の指針案では、固定残業代の算定方法の明確化が求められます。1ヶ月何時間の残業時間を想定して、その固定残業代が決められたのかを明確にし、また、その想定時間を超えて残業のやむなくに至った場合、時間外労働、休日労働、深夜労働ごとの超過分の割増賃金を追加して支払うこととしています。

 

今回の改正案は、求人をする際の労働条件のひとつである残業代に関する明確化の指針ですが、社員にとっても固定残業代の根拠が明確化され、固定残業時間を超えた場合の割増賃金について明確化されることは重要な意味を持つのではないでしょうか。

本改正案の適用は、平成30年1月1日からを目指しています。

 

 

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産後休業以外の選択肢を整理すると

平成29年1月1日から改正「育児・介護休業法」が施行されましたが、今回は従来法(平成21年改正法)で、出産後の育児と労働の両立に向けた働き方の選択肢についてまとめてみたいと思います。

育休か、所定労働時間の短縮か

出産後8週間を経過した女性労働者が職場に戻る際の選択肢は(育児をしない場合は別として)、
①育児休業
②所定労働時間の短縮
のいずれかを申し出ることになります。(この女性労働者の配偶者は、産後8週間以内に育児休業もしくは、所定労働時間の短縮を申し出ることができます)。このいずれも、「申し出」でよく、企業は、その申し出に異議を唱えることはできません(企業からすると育児休業か所定労働時間の短縮の申し出には、対応しなければならないが義務になります)。

育児休業の申し出

育児休業の仕組みに関しては、「パパ・ママ育休プラス」を参照していただくとして、詳しい説明は、ここでは省略します。ただし、この休業期間中の収入は気になるところですので、申し添えますと当該企業の就業規則等で給与が出なくても、雇用保険から当初180日間は、給与の67%、その後は50%が支給されます。育児休業の期間は、生まれた子供が1歳になるまで(「パパ・ママ育休プラスをうまく使えば、1年2か月間)、最長1歳半までです。

所定労働時間の短縮の申し出

何らかの理由で育児休業が取れない場合や、夫婦の一方が育児休業を申し出、他方が所定労働時間の短縮を申し出るということがあるでしょう。所定労働時間の短縮は、1日何時間にするかを決めるのではなく、企業が就業規則等で1日6時間を超える所定労働時間に対して、1日6時間(行政通達では、1日5時間45分から6時間)と定めることになります。期間は、最長、生まれた子が3歳になるまでです。

請求による選択肢

育児休業か、所定労働時間の短縮を申し出た後(あるいは申し出なくても)育児に関する働き方の選択肢として、
①所定労働時間外労働の免除
②時間外労働の制限
③深夜労働の制限
が請求できます(②と③をともに請求することもできます)。こちらは、「申し出」ではなく「請求」ですので、この請求を認めることで事業の正常な運営を妨げるのであれば、事業主は拒むことができます。

所定労働時間外労働の免除

この申請が認められれば、最長、生まれた子供が3歳になるまで、所定労働時間外の労働が免除され、子育てに注力できます。

時間外労働の制限

この申請が認められれば、最長、生まれた子供が小学校に就学するまで、時間外労働が制限されて、残業時間が1月で24時間まで、1年で150時間までとすることができます。

深夜労働の制限

この申請が認められれば、最長、生まれた子供が小学校に就学するまで、深夜(午後10時から翌午前5時まで)の労働が制限されます。

 

これらをうまく組み合わせて、育児に少しでも専念できる働き方を考えたいものです。
条件はありますが、これらの制度は、正社員だけの話ではなく、有期労働者やパートタイマー等にも適用され、育児のために退職をしなくても済む職場環境の整備が法的にされています。

 

 

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雇用保険制度のリテラシーを向上しましょう

雇用保険制度の動向

厚生労働省は、雇用保険積立金の増加を背景に、雇用保険制度の見直しを開始しています。雇用保険積立金は、残高が過去最高の6兆4000億円を超えており、
① 賃金日額上限の引き上げ
② 給付日数の拡大
③ 保険料率の引き下げ
ができる環境になっています。厚労省では、このほか、職業能力を開発することの重要性が増していることから
④ 教育訓練給付の拡充
も行う予定です。早ければ、政府は次期通常国会に法案を提出し、平成29年度から実施する方針です。

雇用保険周知の重要性

雇用保険制度の今後の動向には注目してゆきたいと思いますが、一般的には雇用保険は、労働者が失業したときの「失業給付」として理解されていて、「失業したらいくらもらえるのか」にばかり関心があるように思います。しかし、雇用保険には、その他にも多くの制度があります。今回のコラムでは、現行の教育訓練給付について述べてみたいと思います。雇用保険全般については、一般企業が積極的に社員教育をするテーマでもないので、労働者個々が、「失業給付」以外の制度についても個人のリテラシーを上げて、権利としての給付制度をもっと活用すべきと思います。

教育訓練給付

従来からの「一般教育訓練給付」に、平成26年10月からは、「専門実践教育訓練給付」が追加され充実されてきています。これら「教育訓練給付」は、労働者や離職者が、一旦費用を負担して、厚生労働大臣が指定する教育訓練講座を受講し修了した場合、その教育訓練受講のために支払った経費の全部または一部が支給されます。特に「専門実践教育訓練給付」の場合、複数年(最長3年間)にわたる専門教育受講期間に対して、費用負担金の40%が支給されることになりますし、離職者が、その教育を修了後、目的の資格に合格するなどして、1年以内に企業に就職し、雇用保険の一般被保険者になれば、さらに20%が支給されます(教育訓練修了時、すでに雇用されている方も同様)。
給付額の上限は、受講期間が1年の場合、48万円、2年では、96万円、3年では、144万円です(下限額はいずれも4,000円)。さらに、受講開始時に45歳未満で離職しているなど、一定の条件を満たす場合には、「教育訓練支援給付金」が支給されます。この給付金は、失業中に受講に専念して失業手当が受給できない場合などに失業手当に代わるものとして支給されます。しかも、失業手当の受給期間より長い期間(受講修了まで)受給できるので知っておくべきでしょう。

会社の役割

会社が求める人材育成の一環として社員教育が行われていることと思いますが、この制度は、就業中の社員にも適用されるので、この制度を活用し会社が求める教育訓練コース(支給対象コース)を示して社員の方向性を明確化し、さらに、個人には少々複雑な申請等手続き面で支援すれば、社員は受講に専念でき、より効果が得られるのではないでしょうか。

 

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ますます重要になる管理職の視点

長時間労働の受け止め方

電通社員の過労死で昨今問題になっている過重労働について、一般論として話を整理したいと思います。
会社に勤めて仕事をすることを改めて考えてみると、学校を卒業して希望に胸膨らませて入社してきた新人が、配属された部署の仕事を先輩に教わり、先輩の仕事を見て成長してゆく段階と、仕事を十分にこなせるようになり、管理職ではないにしても、自らの仕事の目標決定に自らかかわり、自らの責任に「やりがい」を感じながらゴールに向かってゆく社員(ここでは狭義にホワイトカラーという)では、おのずと「長時間労働」に関する精神的、肉体的な受け止め方が違ってきます。

管理職は人を見る仕事

新人については、まだ自分に与えられたタスクが、全体の一部に過ぎず、やっていることの真の意味も分からない状況の中での長時間労働は、精神的、肉体的疲労感の蓄積になるので、本人を孤独にさせないようケアしなければ重大な状況に陥りかねないというセンスを上司(とりわけ管理職)は持ち、労働基準法で定められた残業時間の上限を超えさせないことを「管理」しなければならないのです。
一方、「ホワイトカラー」はどうでしょうか。人は、自ら決めた目標については、それを達成するため、時間を忘れて必死になり、気がつけば窓の外が朝日で明るくなっているなどということもあるでしょう。長時間労働を美化するつもりはありませんが、「やりがい」は疲労感につながりにくいことは確かです。日本社会全体として非管理職の仕事を一律に考えるのではなく、本人の仕事へのかかわり方で同じ労働時間でも違った局面にいることをそろそろ理解すべきではないでしょうか。

ホワイトカラー・エグゼンプションimg254

米国のホワイトカラー・エグゼンプションにならって、政府は、同様の制度を確立し、残業時間という概念から解き放たれた仕事ができる方向性を模索しています。この制度が確立されれば、「やりがい」を感じている社員の生産性は向上し、後に続く社員の目標にもなり得ます。ただし、現状はホワイトカラー・エグゼンプションは、まだ日本の制度にはなっていない過渡期にあるため一律にひと月45時間までの残業時間(あるいは36協定)に拘束されることになり、すべての社員を残業時間の上限で管理するか、逆に全ての社員をあいまいな残業時間管理にしてしまうかになってしまっているのではないでしょうか。ホワイトカラー・エグゼンプションかあるいはそれに代わる、「ホワイトカラー」が労働時間に拘束されず活躍できる制度が確立されていない過渡期の今は、管理職にとって労働時間管理が悩ましいのも事実ですが、だからといって現状維持では済まされません。また、ホワイトカラー・エグゼンプションを導入すると残業時間に歯止めがなくなり益々長時間労働になりかねないという反対意見が常にありますが、それを管理するのも管理職の本分ではないのでしょうか。

 

 

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配偶者控除の拡大

思い通りの展開

「103万円の壁」といわれるハードルがあるため、特に主婦に多いパートタイマーが、家計のやりくり上、働く時間を抑制している。したがってこの「103万円の壁」を無くして、女性の働き方に制限を加えないようにしようということで、これまで「配偶者控除」38万円を無くす方向で検討がされていました(配偶者控除に代わる「夫婦控除」を検討するともいわれていました)。しかし、10月1日の読売新聞等の報道では、政府は、2017年度税制改正で、「配偶者控除」を無くすのではなく、この「103万円」を150万円程度(したがって、「配偶者控除」85万円程度?)に引き上げる方向で検討しているようです。
かねがね、働き方を後押しするなら、配偶者控除を無くすのではなく、103万円の壁を引き上げる方がことの本質に沿っていると主張してきたものとして、我が意を得たりの心境でした。

収入を増やすといっても

「103万円の壁」があるから働き方を抑制しているといっても、壁がなくなったからといって子育て期の主婦に多いパートタイマーがフルタイムに近い働き方ができるかというと、それは現実的ではないわけで、150万円程度とするのは絶妙の線引きかもしれません。150万円であろうと壁を作る意味は、税収の落ち込みを抑えるためであるのは自明ですし、政府は、150万円程度に引き上げた分の減収をさらに高所得者への増税で賄うようです。

基礎控除については沈黙

読売新聞の記事では、新しい壁を「150万円程度」としているとのことですが、実は150万円の構成要素(基礎控除+配偶者控除)である「基礎控除」の額が今まで通り65万円とは一言も書かれていませんし、構成要素が基礎控除と配偶者控除からなるとも書かれていません。もし、基礎控除額が変われば(とりわけ低くなれば)その影響は広範囲にわたります。

次は夫婦共働き世帯への配慮

パートターマーとして働いている主婦とその夫も夫婦共働きですが、ここでは、狭義の意味で、夫婦ともフルタイムで働いている世帯という意味です。当初はフルタイムもパートタイムも区別せずに抜本的な働き方の改革を目指していたはずですが、2017年度の税制改正のここまでの結論では、フルタイムの夫婦共働き世帯は置いてきぼりになっています。今後の議論の中で対策が話し合われるのかもしれませんが。

 

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非正規労働者の定着?方向と手段が間違ってる

非正規労働者

国(厚生労働省)が示す「非正規労働者の正規化」や社員と変わらない「同一労働同一賃金」の実現に向けての方向性は、安倍内閣の「一億総活躍社会」の実現に向けてのアクションとして知られているところですが、個々の企業においては、非正規労働者について何か勘違いしているのではないかという事例があります。

給与体系の見直し

パートタイマーやアルバイトなどの非正規労働者を抱える多くの企業では、労働者の確保に頭を悩ませています。それは、新規労働者を募集しているにもかかわらずなかなか応募してこないということと、せっかく採用した非正規労働者が長期に定着しないことです。
この点の対策としてある企業では、非正規労働者の給与体系を根本的に見直しています。しかし、その結果として企業の思惑通りに新規応募者が増え、採用中の非正規労働者が長期に定着するモチベーションを与える変更になっているかは、疑問が残るものもあるようです。

企業の思惑と非正規労働者の思惑が違う

中には、ち密な給与体系を構築し、社員の給与体系同様に非正規労働者内での昇給、昇格があり、ボーナス査定や、正社員登用もあることに触れたものもあります。非正規社員の長期にわたる貢献が給与に反映される、ち密な体系を構築したことには敬意を表しますが、多くの非正規労働者には、このような給与体系の変更が、その企業への定着のモチベーションにはならないのではないかと思います。具体的には、給与(時給)を上げるための貢献期間と時給の上昇額が非正規労働者の心を動かすものになってないので、この程度なら、いつでも他の時給の良い企業に替わればよいと考えてしまいます。

定着の肝は、職場環境

就職後、仕事内容の思惑の違いや、実際の仕事に対する給与の低さが原因の場合、非正規労働者はすぐにやめてしまうでしょう。では、ある程度その企業に定着している非正規労働者を引き留める手段は、給与体系の変更でしょうか?もちろん、画期的に給与が上がる変更であれば話は違ってきますが、そんな話はないわけですから、企業が検討すべきことは、職場環境をいかに働きやすいものにするか、現状を分析し変更してゆくことではないでしょうか。職場環境とは、設備、ツール等物理的環境だけではなく、非正規社員を取りまく人間関係です。その際、企業が取りがちな対策は、正社員の上司が非正規労働者にどう接するかを教育するなどになりがちです(もちろんこれも非常に重要ではあります)。しかし、根の深いところにある問題点は、毎日ともに働く非正規社員同士のハラスメントにあることに気付いているでしょうか。意識するとしないとにかかわらず、人間は3人寄れば、そのうちの1人をいじめ始めます。非正規労働者のリーダー的立場の人に度量がない場合、顕著に1人の非正規労働者を他の非正規労働者がいじめ始めます。その非正規労働者がいなくなれば次を探し始めます。非正規労働者を抱える企業は、正社員だけでなく非正規労働者同士の人間関係にも目を見張り、非正規労働者の中に入ってゆく並々ならぬ取り組みをしなければなりません。

 

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特定受給資格者等、適用範囲拡大

省令改正

職業安定分科会雇用保険部会(第114回)で説明があった「雇用保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令案概要」の一部をまとめました(同様の記事が「労働新聞」8月29日号にあり)。
どのような内容か見てみます。

特定受給資格者の範囲拡大

1.賃金不払いを理由とする離職について、賃金の1/3を上回る額が支払期日までに支払われなかった月が1月でもあった場合、それを理由に退職した者は、特定受給資格者となります。
2.事業主が休業等の申し出の拒否など、育児・介護休業法等に規定する義務に違反した場合
それを理由に退職した者は、特定受給資格者となります。

有期雇用労働者の育児・介護休業給付の条件緩和

申出時点で過去1年以上雇用されていた条件は変わりませんが、
1.子が1歳になった後も雇用継続の見込みがあることの条件は無くなり
2.子が(2歳になるまでではなく)1歳6か月になるまでの間に雇用契約が更新されないことが明らかである者を除くの条件が緩和されました。

介護休業給付の対象家族の拡大

介護の対象が、「祖父母」、「兄弟姉妹」、「孫」の場合も「同居・扶養」しているという条件を無くしました。

 

これらの施行日は、平成29年1月1日です。

企業の対応

特定受給資格者になれば、雇用保険の基本給付(失業給付)の給付制限(通常3ヵ月間)が無く受給できるという退職者本人へのメリットですので、企業に金銭面の直接的な影響はないとも言えますが、今回の省令改正で、企業の対応に不満を持つ労働者が退職しやすくなることは確かで、その退職者から広がる企業イメージの悪化につながりかねません。
特に、育児・介護休業の申し出を特別の理由もなく拒否することで貴重な戦力を欠くことのないよう留意したいものです。

 

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106万円の壁と130万円の壁を整理すると

130万円、106万円

平成28年10月から「短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大」が施行され、その内容が「年収106万円」で区切られることから、これまでの130万円の壁が崩れるような印象を持っている方が多いようですので、ここでそれぞれの関係についてまとめておきましょう。
社会保険に加入しなければならない、現在の「130万円の壁」について確認しておくと、働き方の条件(基準)として、
(1)  1日の労働時間が、正社員の3/4以上
(2)  1ヵ月の勤務日数が、正社員の3/4以上
(3)  年収が「130万円」以上
です。

106万円の条件

これに対して、10月から施行される「106万円の壁」の条件(新基準)は、
(1) 1週間の勤務時間が20時間以上
(2) 年収が「106万円」以上(月収が「88,000円」以上)
(3) 雇用期間が1年以上の見込みがあること
(4) 従業員数が501名以上の企業(大企業条件)で働くこと
(5)   学生でないこと
です。

以上の条件(基準と新基準)を見比べると、「106万円の壁」から、学生、中小企業で働く人、働く期間が短い人は、除かれます。その他の人のうち、1週間の勤務時間が20時間以上(1日の労働時間は問われない)で月収が88,000円以上になる人が、「106万円の壁」の対象者です。

自分はどっち?

上記106万円の条件のうち、(3)、(4)、(5)に該当する人は、自分は106万円か130万円か気になるところでしょう。
わかりやすい例として、以下の例で説明します。
旦那様が厚生年金に加入している主婦Aさんは、大企業のP社と、中小企業のQ社でパートタイマーとして働いています。
1.P社では、週に20時間働き、月収が、5万円(年収60万円)、Q社での月収が、4万円(年収48万円)の場合:
P社での年収は、60万円 (< 106万円) なので、「106万円の壁」にあたりません。
また、P社とQ社の合計年収は、108万円 (< 130万円) なので、「130万円」の壁にもあたりません。
すなわち、Aさんは、P社、Q社の社会保険に加入する必要はなく、旦那様の被扶養者となります
(Aさんは、国民年金の第3号被保険者です)。

 

2. P社では、週に20時間働き、月収が、7万円(年収84万円)、Q社での月収が、4万円(年収48万円)の場合:
P社での年収は、84万円 (< 106万円) なので、「106万円の壁」にあたりません。
しかし、P社とQ社の合計年収は、132万円( > 130万円)
 なので、「130万円の壁」にあたります。
すなわち、Aさんは、P社、Q社の社会保険に
加入する必要はないものの、旦那様の被扶養者
から外れて、自分の健康保険料(税)と国民年金の
保険料を支払うことになります
Aさんは、国民年金の第1号被保険者です)。

 

3.P社だけで週に20時間働き、月収が、9万円(年収108万円)の場合:
P社での年収は、108万円 (> 106万円) なので、「106万円の壁」にあたります。
すなわち、Aさんは、P社の社会保険に加入してP社の健康保険が適用され、厚生年金保険料を
支払う
ことになります
(Aさんは、国民年金の第2号被保険者です)。

 

この例でわかる通り、「130万円の壁」が「106万円の壁」に代わったのではなく、働き方によってどちらかの壁を意識することになります。

 

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休業手当と休業(補償)給付、社員とパートの給付基礎日額

目線の違いが制度の違いをもたらす

手当とは、基本給以外の「心づけ」という意味合いなのに対して、給付とは「債務者の行い」というような意味合いなので、おのずと支給額の計算方法に違いが出ます。
例えば、休業手当と休業補償給付。それぞれの意味については、ここでは省略しますが、休業の日に一部就労時間があった場合の支給額の考え方に違いが出ます。すなわち、休業手当では、休業当日に平均賃金の60%以上の就業時間があれば、その日の休業手当は不要(60%が確保されているから)なのに対して、休業補償を行う場合、休業当日、平均賃金の例えば60%が就労済みだったとき、その賃金に、就労しなかった40%の6割(24%)を加えた84%が支給されます。

社員とパートとの給付基礎日額の計算方法の違い

休業手当や休業(補償)給付額の計算のもととなる平均賃金(=給付基礎日額)の計算方法が、社員とパートでは違います。
平均賃金(給付基礎日額)の原則の計算式は、算定すべき事由が生じた日以前3か月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額をその期間の総歴日数で除した金額です。
    平均賃金(算定基礎日額) = 3ヵ月間の賃金総額 / 3か月間の総歴日数
これに対し、パートは社員のように毎日就労するわけではないのでこの計算式では、平均賃金(算定基礎日額)が低くなってしまうため、3か月間に実際に労働した日数で除します。
3ヵ月間の賃金総額 / 3か月間の実働日数
さらに、パートは、1日の所定労働時間に満たない働き方をする場合もあるので、さらにこの計算式の60%を平均賃金(算定基礎日額)としています。
平均賃金(算定基礎日額) = (3ヵ月間の賃金総額 / 3か月間の実働日数) x 0.6

社員とパートの休業手当の違い?

したがって、考え方に不公平はないのですが、一見以下のようなことになります。

「休業手当は、平均賃金の60%」ですから、
社員の場合: 休業手当 = (3ヵ月間の賃金総額 / 3か月間の総歴日数) x 0.6
一方、パートの場合: 休業手当 = (3ヵ月間の賃金総額 / 3か月間の実働日数) x 0.6 x 0.6

なんだか、パートは損してるようですが、この違いは、就業形態の違いが計算式の違いになっているだけです。

パートさんの特典?

休業手当の計算式では一見、パートが損しているように見えますが、休業(補償)給付では、こんな特典があります。

休業(補償)給付額 = 休業基礎日額 x 0.6 x 休業日数

この「休業日数」というのは文字通り休業した日数なので、それが就労日に休業したのか公休日だから休業したのかの区別がありません。

つまり、土日の休日も、もともと就労しない平日も休業(補償)給付の対象になるのです。

 

平均賃金は、労働基準法の表現、給付基礎日額は労災保険法の表現。同じものです。

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