キャリアアップ助成金による106万円の壁打破

キャリアアップ助成金の活用

 

キャリアアップ助成金の活用に関する案として、昨年12月7日の経済財政諮問会議で塩崎厚生労働大臣は、今後労働力需給がひっ迫する中で短時間労働者の労働参加の促進や、短時間労働者の所得並びに年金の確保への推進を明らかにしました。
このことの目的は、先々週の社労士コラムで述べた「106万円の壁」を見据えて、短時間労働者がかえって就業時間を自己規制することのないよう、「106万円の壁」を超えて、社会保険料を支払ってもなお、手取額が従来の額以上になるよう側面から支援することにあります。

 

対策(案)の内容

①賃金の引き上げを行う事業主への支援
・短時間労働者の賃金を2%以上増額させた場合、1事業所当たりの人数と対象範囲に応じて、5万円~300万円(大企業はその3/4、以下同じ)を助成します(本年4月から平成31年度までの措置)。
・被用者保険が適用となる短時間労働者等について、賃金を3%以上増額した場合、2万円/人を助成(14%以上で10万円/人)します(本年10月から平成31年度までの措置)。

 

②労働時間延長を行う事業主への支援
・週労働時間を5時間以上延長し被用者保険を適用した場合、20万円/人を助成します(本年4月から平成31年度までの措置)。
・賃金の引き上げと合わせて処遇改善に取り組み、週労働時間を1時間以上延長した場合、4万円/人(4時間以上延長で、16万円/人)を助成します(本年10月から平成31年度までの措置)。
注)①、②の助成金は、いずれも1事業所当たり300万円が上限です。

 

短時間労働者の手取り額(計算例)

対策案の内容に沿った賃上げや労働時間の延長を行った場合の手取り額を計算すると、
・賃金を3%(1,000円/時→1,030円/時)増額、労働時間を週5時間(20時間/週→25時間/週)延長した場合、
従来の計算式:1,000円/時 x 20時間/週 x 4.33週/月 = 86,600円/月(社会保険料支払いなし)。
増額、延長後の計算式:1,030円/時 x 25時間/週 x 4.33週/月 = 111,498円/月
標準報酬月額が、110,000円になるので、社会保険料は、16,164円(協会けんぽ保険料、厚生年金保険料)となり、手取額は、111,498 – 16,164 = 95,334円/月になります。
このような働き方の選択ができれば、社会保険料を支払ってもなお、手取り額を増額できます。このことにより、将来、国民年金だけでなく厚生年金が支給されることになります。
短時間労働者の労働時間を週5時間延長できるかは、助成金を申請できる事業主がそれを認めたとしても、労働者のそれぞれの事情がありそんなに単純ではありませんが、賃金を3%増額する想定に対しては、キャリアアップ助成金が事業主を支援します。

 

事業主が得る助成金(計算例)

本年10月以降平成31年までに被用者保険が適用となる短時間労働者の賃金を3%増額した場合、1.5万円/人(501人以上の大企業の場合)のキャリアアップ助成金が得られます。
また、週労働時間の5時間延長を認めれば、15万円/人(501人以上の大企業の場合)のキャリアアップ助成金が得られます。
ただし、事業主として、短時間労働者の社会保険料の折半分を納付することになります。

 

 

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労働基準法、平成28年度改定

あけまして、おめでとうございます。                                                                 i-saru73
本年が、皆様にとって良き年でありますことをお祈り申し上げます。

 

労働基準法の改正案は、労働政策審議会からの「おおむね妥当」との報告を受け、昨年4月に閣議決定され、国会に提出されています。昨年の国会では、いわゆる安保法案の影響で、可決に至っていないものの、施行日が4月1日(一部、平成31年4月1日)ということからこの通常国会での可決成立の可能性が高い法案です。年頭に当たり、その内容を概観します。

法案の提案理由

国会に提出された法案には、その提案理由が書かれています。
すなわち、
長時間労働を抑制するとともに、労働者が、その健康を確保しつつ、創造的な能力を発揮しながら効率的に働くことができる環境を整備するため、
年次有給休暇にかかる使用者への義務付け、
高度な専門的知識等を要する業務に就き、かつ一定額以上の年収を有する労働者に適用される労働時間制度の創設等
の所要の措置を講ずる必要がある。」
つまり、一定の条件を満たした労働者にその能力をいかんなく発揮してもらうため、労働時間の規制を撤廃する。しかし、それだけでは、労働時間が無制限になってしまう恐れがあるので、労働者全般の年次有給休暇の取得に関して使用者に義務付けをし、時間外労働に関する行政官庁の助言指導を強化するというものだと解釈されます。

法案の概要

多様で柔軟な働き方の実現に向けて

・フレックスタイム制の見直し
・企画業務型裁量労働制の見直し
・特定業務専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設

長時間労働抑制策・年次有給休暇取得促進策等として

・中小企業における月60時間超の労働時間に対する割増賃金の見直し
・著しい労働時間に対する助言指導を強化するための規定の新設
・一定日数の年次有給休暇の確実な取得
・企業単位での労働時間等の設定改善に係る労使の取り組み促進

このうち、「中小企業における月60時間超の労働時間に対する割増賃金の見直し」の施行日は、平成31年4月1日、その他は、今年の4月1日です。

労働時間の規制がなくなる労働者

課題解決型提案営業をする営業職裁量的にPDCAを回す業務に従事する企画職
これらの業務に該当する者は、収入面の条件がないので際限なく該当することになり、運用には注意が必要です。労働政策審議会のうちの労働条件分科会で、企画業務型裁量労働制に、該当営業職と該当企画職を追加することには、「長時間労働になる恐れがある労働者の範囲が拡大することとなる」ので認められないとの意見がありました。

高度の専門的知識を必要とする、いわゆる高度プロフェッショナル
収入面で少なくとも1,000万円以上の年収を有することが条件になっています。

この法案は、一部労働者の能力をいかんなく発揮してもらうために、長時間労働の抑制策によって、長時間労働になることなく、その成果を結実するのか、労働組合などが言う「残業ゼロ法案」でしかないのか、慎重に行方を見守り、意見を述べなければならないと思います。

 

 

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106万円の壁、社会保険の新たな境界

平成28年10月施行

厚生年金保険法等の法律が改定されて、短時間労働者(法律上は、パートタイム労働者といい、準社員、嘱託、臨時社員、アルバイト、パートタイマーなどの名称に無関係です)が、その働き方を考えなければならない法律の「壁」が、平成28年10月から「短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大」で施行されます。労働者側は、「壁」とマイナスイメージでとらえますが、行政側は、
・被用者でありながら被用者保険の恩恵を受けられない非正規労働者に被用者保険を適用し、セーフティネットを強化することで、社会保険における「格差」を是正する
・社会保険制度における、働かない方が有利になるような仕組みを除去することで、特に女性の就業意欲を促進して、今後の人口減少社会に備える
ことを念頭に置いているとのことです。

適用対象者の条件

106万円の壁」は、現状の「130万円の壁」に全面的に置き換わるものではなく、以下の条件をすべて満たした方々にとって、社会保険に加入するか否かの境界が、130万円から106万円に変わるというものです。
条件:
1.週の所定労働時間が20時間以上あること
2.賃金が月額8万8千円(年収106万円)以上あること
3.勤務期間が1年以上見込まれること
4.学生でないこと
5.規模501人以上の企業であること

条件の留意事項

3に関しては、当初の契約期間が1年未満でも、継続契約の可能性があり、それも含めると1年以上になりそうというときも「見込まれる」ことになります。
4に関しては、現在の130万円の壁では、学生であってもなくても変わりがなかったものが、「106万円の壁」で条件になりましたので、学生の場合は、これまで通り「130万円の壁」になります。
5に関しては、労働者側の条件ではなく、折半で社会保険料を支払うことになる企業側の条件です。しかし、労働者がどの規模の企業で働くかによって、労働者の壁の金額が変わることになります。ちなみに、派遣労働者の場合、この企業規模とは、派遣先の企業規模ではなく、労働契約を結ぶ派遣元の企業規模になります。

時給1,100円

短時間労働者の時給が、1,100円で週に20時間の労働時間とすると、4週ある月で、
1,100円 x 20時間 x 4週 = 88,000円
です。

 

 

 

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改正労働者派遣法に関するその他の義務

労働条件面の配慮

 

このコラムでこれまで不定期に改正労働者派遣法の骨子について、私見を交え述べてきましたが、この法律は、当然ながら法の趣旨を全うするための周辺措置についても、派遣元及び派遣先にいくつかの義務付けをしています。
まず、派遣先の直接雇用労働者派遣労働者の労働条件面での一定の配慮が求められています。すなわち両者の均等待遇の配慮義務としての、賃金、教育訓練、福利厚生についての規定です。
(1)賃金
・派遣先の直接雇用労働者の賃金水準との均衡等を考慮し、派遣労働者の賃金を決定する配慮義務
・派遣労働者から求めがあったときは、この配慮義務に関して会社が考慮した事項等について派遣労働者に説明する義務
(2)教育訓練
・派遣元からの求めに応じ、直接雇用の労働者と同種業務に従事する派遣労働者に対して、派遣先が教育訓練を実施するよう配慮する義務
(3)福利厚生
・直接雇用の労働者に利用の機会を与える福利厚生施設について、派遣労働者に対しても利用の機会を与えるよう配慮する義務

 

労働・社会保険の適用

今回の改正によらず、労働・社会保険への加入、適用の規制を強化する中で、改正労働者派遣法、施行規則等でも派遣元での、雇用保険法健康保険法厚生年金保険法に基づく派遣労働者の加入義務を強化しています。法の趣旨からは離れますが、派遣労働者としては、これらに加入し保険料を支払うことで自らの労働・社会環境を改善するか、当面の手取り額を確保するかは、その働き方の選択によります。

 

労働者派遣事業報告書

派遣事業者が、これまでの許可制もしくは届出制から、許可制に一本化されたことで派遣元事業主は、毎年、事業所ごとに事業報告を都道府県労働局経由で厚生労働大臣に提出しなければならなくなりました。この事業報告書により、雇用安定措置状況、教育訓練の実施状況等が報告されることになるので、改正前に特定労働者派遣事業者(届出制)だった派遣事業主は気を付けなければなりません。

 

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ー12月号ー

注目トピックス:
長時間労働の改善を「投資先の見直し」から考える
特集:
・掃除時間は給与を支払うべきか
・勤怠管理方法の注意点
話題のビジネス書を斜め読み
事務所だより
経営診断ツール:
長時間労働改善ワークシート

 

ー11月号ー

注目トピックス:
企業内人材育成推進助成金の創設について
特集:
・能力不足の社員を解雇できるか
・雇用契約と業務委託契約の違いについて
話題のビジネス書を斜め読み
事務所だより
経営診断ツール:
業務委託契約チェックシート

 

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おしらせ

 

 

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人材育成、経営者の役割

企業成長の源泉

かつてもてはやされた成果主義は、個人の矮小な成果主義に転嫁され、部下や後輩を育てるという根本を見失った反省から、昨今では人材育成(従業員の質的向上)こそが企業成長の源泉として見直され、その具体策も議論されています。
いわく、
1.従業員に学びの機会を与える
2.学びの機会を仕事に組み込む
3.小さな成功体験を味合わせる
4.中間管理者以上の者に、人材育成の責任を持たせる
等です。
このためには、人材育成は、経費節減時の調整弁ではなく、将来に向けての投資と捉えることが重要になります。

 

中間管理者の育成

上記の議論の中で、「4.中間管理者以上の者に、人材育成の責任を持たせる」ことが、実は難しいと言われています。なぜなら、彼らの多くが、かつての成果主義的人事制度の中、社内で誰からも育成された経験がなく、これといった教育も受けずに現場に張り付きながら育ってきた人々だからです。これは、10年前の話ではなく、多くの中堅、中小企業で今でもいえることです。つまり、育てられた経験がない者に「人材育成の責任」だけを持たせても、どうしていいかわからないことになります。育成とは、若年層の育成と考えがちですが、中間管理者向けにも同時に、彼らにふさわしい教育カリキュラムの取り込みが必要になります。

 

中間管理者の育成カリキュラム

中間管理者自身の能力を伸ばすために求められる「マネージメントスキル」や「コンセプチュアルスキル」についてのカリキュラムも必要なことですが、ここでは述べません。「中間管理者が部下、後輩を育成する」ことに特化すると、その重要な点の一つは、なにも市販の教科書や専門書を読み解くことではなく、所属する企業の方向性経営者の理念を自分なりに咀嚼して、部下、後輩に伝えることではないでしょうか。ここで重要なことは、壁に張り出された企業理念を朝礼で唱和することではありません。自身の言葉で、「その心」を伝えることが重要です。

 

経営者こそ教育者

経営者が、若年層の一人ひとりを対象に、企業理念を語れる企業は幸いです。しかし残念ながら、そうしている時間がないのであれば、その「語り部」の役割を中間管理者にゆだねなければなりません。したがって、経営者は、企業理念やその想いを、中間管理者の腑に落ちるまで、あらゆる機会をとらえて正しく伝える努力を惜しんではならないと思います。
「人材に不満があるとすれば、それは人材に恵まれていないのではなく、人材を育てられないからである」(「中小企業の人材確保・育成10カ条」から)といわれます。経営者こそ教育者の教育者として、人材育成の中心でもあるのです。

 

人事・労務管理コンサルテーション

 

 

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改正労働者派遣法の二面性

派遣期間制限の見直し

改正前の派遣受入可能期間は、いわゆる26業務については、制限なし、その他(いわゆる自由化業務)は、原則1年(最長3年)であったのに対して、改正(平成27年9月30日施行)後は、26業務という特別扱いを無くして、どの業務も一律に「個人単位」と「事業所単位」で3年の期間制限を設けることになりました。 すなわち、施行後の派遣契約では、有期契約の派遣労働者Aさんという個人は、業務にかかわらず3年を超えて継続就労できません。しかし、この見直しだけでは、派遣元と派遣先がAさんを通じて、せっかく信頼関係を築いたころ、契約が終わってしまうし、何よりAさんが3年を超えて継続就労を希望する場合に酷なので、「事業所単位」での期間制限を3年とすると同時に、派遣先企業が3年を経過する1か月前までに自社の過半数労組(過半数労組がない時は、過半数代表者)の意見を聴取*すれば、3年単位で派遣受入期間を延長できるとしました。 このことによって、Aさんは、「個人単位」では、継続就労ができませんが、「事業所単位」では、受入期間が3年間延長されるので、結果として、同じ事業所内のそれまでと異なった「組織単位」(例えば、同じ人事課ではなく、経理課で)で継続就労が可能になります。
*「意見を聴取」とは、意見を聞けばよいので、手続上の瑕疵がなければ、そこで労組がどんなに異議を唱えても、派遣先事業主が望めば延長ができることになります(会社側は労組に対応方針を説明しなければなりません)。

派遣元の雇用安定措置

このように改正派遣法は、本来、派遣就労は、”臨時的・一時的”な、補完的就労形態という原則から、直接雇用や無期雇用を志向するための「雇用安定措置」に重きを置くために派遣期間は、例外なしに3年という期限を設けるという改正と、派遣就労という働き方の選択肢も認めなければならないという二面性を取り入れたような内容になっています。
「雇用安定化措置」とは、派遣先企業に3年も就労している労働者に、派遣元は、労働者の意向を尊重しながら
(1)派遣先へ直接雇用を依頼する
(2)継続就労できなかった時は、新たな就業機会(派遣先)を提供する
(3)派遣元で無期雇用する
(4)その他の雇用継続措置(例えば、新たな就業機会を確保するまで有給で教育する)
という雇用安定化措置を努力義務(場合によっては強制義務)としなければならないとしています。

さらに待ち受ける40条の6

改正労働者派遣法では、派遣労働者を保護する措置として、40条の6で派遣先企業の違法行為に対するペナルティを明確に規定しています。これが「労働契約の申し込みみなし制度」です。
この制度については、本年7月27日の本コラム「労働契約申込みみなし制度(平成27年10月1日施行)」で書きました。

改正労働者派遣法の誤解

改正労働者派遣法

本年9月30日から改正労働者派遣法(以下、新法といいます)が施行されたことはご承知の通りです。
この改正の派遣期間について多くの方は、
新法では、業務に無関係に同じ部署で引き続き3年以上働くことができなくなった。したがって、旧法では、いわゆる政令26業務については、派遣期間の上限がなかったのに、新法ではその扱いがなくなり、3年で派遣が終わる
と理解しているのではないでしょうか。

政令26業務の扱い

特に、派遣期間に制限がなかった政令26業務のほとんどについて、派遣期間が最長3年間*になったことについて、先日、テレビを見ていたら、政令26業務に従事している派遣労働者(通訳の方)が、せっかく無期限の職につけたのに新法で、3年という上限になり「非常に不安です」とインタビューに答えていました。
しかし、これは本年9月30日以降に派遣契約が結ばれる場合の話であって、その前から無期限の職についていた政令26業務の派遣労働者は、現在の契約が何らかの事情で終了しない限り、無期限の契約が継続するわけですから心配には及びません。また、政令26業務で、ある有限期間の契約であった場合も、その契約を終了しないで既存契約の終期を延長すれば、事実上期間に制限がなくなります。

*今回の改正でも政令26業務のうち派遣期間の上限が3年にならなかった(期間に制限なし)業務:
建築物清掃関係
建築設備運転等関係
駐車場管理等関係
テレマーケティングの営業関係

政令26業務以外でも上限3年の制限がない方:
派遣元事業主に無期雇用されている派遣労働者
60歳以上の派遣労働者
終期が明確なプロジェクト業務への派遣労働者
日数限定業務(1か月の勤務日数が10日以下等)の派遣労働者
産前産後休業、育児休業、介護休業等を取得する労働者の業務を代替する派遣労働者

マイナンバーと扶養控除申告書

年末調整の季節

年末調整手続に必要な各保険会社からのこの1年間の保険料支払証明が届いていることでしょう。企業に勤める給与所得者には、毎月の源泉徴収税を年末に調整できる良い機会だと思います。保険料や確定拠出年金等の拠出金のある方は、年末調整をすることで多くの場合、還付金が得られることになるので、遅れることのないよう必要資料を社内とりまとめ部署に提出していただければと思います。

「給与所得者の扶養控除申告書」

この年末調整に係る提出書類の一つに給与所得者の扶養控除等(異動)申告書があります。企業及び労働者にとって、退職等を除き、通常の業務では、個人番号を会社に通知し、会社が個人番号取扱事務処理を行う、社会保険関連の最初の作業になります。通常は、年末調整に必要な書類の中にこの扶養控除申告書があり、そこには、今回から個人番号を記入する欄が新設されているので、そこに提出者、配偶者扶養親族の個人番号を記入して提出することになります。

個人番号収集手順の再確認を

このように、具体的な作業が始まる今こそ、個人番号を含む特定個人情報を扱う部署では、個人番号を収集(取得)する手順を再確認してみてはいかがでしょうか。
1.従業員に個人番号(マイナンバー)について周知しているか
2.扶養親族の個人番号も含め、個人番号の利用目的を明確にしているか
3.個人番号取扱事務担当者(責任者)を決め、そのタスクを明確にしているか
4.収集した個人番号が漏えいすることのないよう組織的、人的、物理的、技術的安全措置
を明確にしているか
など。
とりわけ、就業規則の変更による人的安全措置の担保が重要になります。

 

人材育成と企業業績

選考解禁日がまた変わる?

大卒の就職希望者に対する企業の選考解禁日が、今年から後ろ倒しとなり、8月解禁で進められるという「日本再興戦略」としての政府方針が、たった1年やってみただけで、来年度は、6月解禁(内定出しは10月)という方針を経団連が固めた(11月に指針を発表)との報道が先ごろありました。
「日本再興戦略」での8月解禁の意義は、4年次学生の学習時間の確保と海外の学年期間(米国の大学は9月から5月、英国は9月から6月等)との関係から海外留学等の推進のために8月解禁が適当としたからでした。政府も甘く見られたものです。

人材の育成

毎年のように変わる就活スケジュールに翻弄されるのは第一に学生ですが、大企業の内定出し後に事実上の採用活動が始まる、大企業(一部の有名企業)以外の企業では、自分たちでコントロールできない採用スケジュールに、毎年いらだちに似たものを感じているのではないでしょうか。
企業業績(競争力)と社員の質(人材)との関係(正の相関)を否定するデータはないわけですが、「ヒト、モノ、カネ」といわれる経営資源のうち「ヒト」に関しては、その他の経営資源と違って、採用後の投資で「価値」が決まること、そして、Aさんが辞めたらBさんで代替できるという性質の資源ではないことです。このことは、一部の有名企業以外の企業では、採用活動において学生の学業成績の良さを「人材」の尺度とせず、面接等において、人柄や採用後の本人の伸びしろを見通すことが重要であると捉えることで、将来輝く「人材」を確保できることになります。より重要なのは採用後の育成(投資)なのですから。

カンパニータンク11月号

採用後の人材育成の重要性について、私と元ジャイアンツ、ベイスターズの駒田徳広氏との対談を掲載します。
この記事は、「カンパニータンク11月号」に掲載されているものですが、許可をいただきここに転載します。
駒田氏対談(アクシス社会保険労務士事務所)
出典:カンパニータンク 2015年11月号(国際情報マネジメント発行)